登場人物

坂崎空也

坂崎空也(さかざき くうや)

江戸神保小路直心影流尚武館道場の主・坂崎磐音の嫡男、十六歳。安永九年(一七八〇)、紀州高野山の山中、雑賀衆姥捨の郷にて誕生。高野山の大自然に囲まれ幼少期を過ごす。一家で江戸帰着後、小梅村にあった今津屋御寮の庭で五歳から剣術の独り稽古を始める。九歳のとき、尚武館道場に押し入った柳生の遣い手を討ち果たし初陣を飾る。十二歳より尚武館道場入門を許された。寛政五年(一七九三)、父磐音と共に十一代将軍徳川家斉にお目通りし、備前長船派の名刀「修理亮盛光」を拝領。一家で父の故郷豊後を訪れた寛政七年(一七九五)夏、門外不出の薩摩藩御家流儀「東郷示現流」を学ぶ決意を固め、独り薩摩へと武者修行に旅立つ。

浄心寺帯刀
(じょうしんじ たてわき)

肥後人吉藩領宮原村の名主。隠居した父親の新左衛門と妹のこう、弟の次郎助が飫肥(おび)領内矢立峠で空也と知り合った縁から、宮原村を訪れた空也を逗留させる。

渋谷重兼(しぶや しげかね)

薩摩藩領菱刈郡にある外城(薩摩藩主島津家より与えられる私領)の一つを治める渋谷家の領主。薩摩藩八代目藩主島津重豪の御側御用として長年仕えた重臣であったが、藩主が九代目藩主齊宣に代わったときに隠居し、江戸から菱刈郡に戻ってきた。戦国時代の武将を彷彿とさせる矍鑠とした人物。

眉月(まゆつき)

渋谷重兼の孫娘、十四歳。江戸育ちだったが、隠居して菱刈郡の所領地に戻る重兼に同道してきた。素直に気持ちを表現する感情豊かな美しき娘。

薬丸新蔵(やくまる しんぞう)

「薬丸小路に鬼が棲む」と噂されるほど日々厳しい稽古を積む才能豊かな野太刀流の若き遣い手。薩摩藩御家流儀の東郷示現流に対し、並々ならぬ対抗心を燃やす。

外城衆徒(とじょうしゅうと)

幕府の密偵や布教のために薩摩入りを図る隠れ念仏などを国境で阻止するため、代々の島津氏からその存在を黙認されてきた残忍無比の無法集団。日向、肥後、薩摩の国境に広がる険しい山並みを支配し、他国者から恐れられる存在。別名「山ん者」とも呼ばれる陰の一団を率いる頭目の正体は謎に包まれている。

坂崎磐音(さかざき いわね)

坂崎空也の父。江戸神保小路尚武館道場の主にして直心影流の達人。元は豊後関前藩士だったが、藩内騒動に巻き込まれ江戸に出奔。深川六間堀の金兵衛長屋で浪人暮らしを始める。用心棒仕事や鰻割きなどで糊口を凌ぎながら、佐々木道場(のちの尚武館道場)の主・佐々木玲圓のもとで修行を積み、江都に名をはせる剣術家に成長。佐々木家の養子となった。両替商今津屋や幕府要人らとの知己を得て、のちに次期将軍候補西の丸徳川家基の剣術指南役となる。時の権力者田沼意次との長きにわたる戦いが続いた。

おこん

坂崎空也の母。十五の齢から両替商今津屋に住み込み奉公にあがり、「今小町」と呼ばれるほど美人で気風のいい深川娘に成長。父金兵衛が差配する長屋に住む浪人坂崎磐音と知り合う。尚武館道場を継ぐことになった磐音と所帯を持つにあたり、旗本速水家の養女に入る。空也と娘の睦月を出産し、尚武館道場の内所を切り盛りしている。

坂崎睦月(さかざき むつき)

坂崎空也の妹 十三歳。

中居半蔵(なかい はんぞう)

豊後関前藩国家老。直目付から藩物産所組頭、江戸留守居役などを歴任。坂崎正睦・磐音父子とともに藩の財政再建に尽力した。

奈緒(なお)

坂崎磐音の元許婚。藩内騒動が元で身売りし吉原へ。山形の紅花商人に落籍されるも、のちに夫と死別。故郷関前に戻り、紅花栽培を始める。

重富利次郎
(しげとみ としじろう)

豊後関前藩士。土佐藩士重富百太郎の次男であったが、十八のときに佐々木道場(のちの尚武館道場)に入門。磐音のもとで研鑽を積み、豊後関前藩に仕官した。

重富霧子(しげとみ きりこ)

関前藩士重富利次郎の妻。高野山姥捨の郷で下忍雑賀衆に育てられ、日光社参の折りに徳川家基の命を狙う。家基の影警護をしていた坂崎磐音らに助け出されてからは、師匠にして父親代わりの弥助とともに尚武館の密偵方を担う。霧子にとって姥捨の郷で生まれた空也は弟のような存在。

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(画)蓬田やすひろ